2018年9月末にシカゴ出張の機会があり、話題のAmazon Go店舗を体験してきました。Amazonのおひざ元シアトルで3店舗がオープンしていますが、4店舗目としてシカゴの市内に新しく開店したお店です。
土日は営業しておらず、朝7時から夜8時で、今回スケジュールの都合上、月曜日の朝7時過ぎの訪問となりました。ウィリスタワー(旧シアーズタワー)の近くにある、フランクリン・ストリートのお店に行って、実際どういったものだったのか、感想を記しておきます。
Amazon Goとは
Amazonはオンラインのお店、バーチャルな店舗ですが、Amazon Goは実際に存在するコンビニのようなリアルな店舗です。効率化を追求する極限として、レジがなく、お客はアマゾンのアカウントを利用して買い物ができるようにしていて、商品も自動で認識されるため、お客さん側からすると、「お店に入って、商品を棚から取り、お店を出る」だけ、という行動になります。
以下はスマホに入れたアプリの画面ですが、シンプルに買い物方法が示されています。
Amazon Goを利用する前に
このような特徴から、このお店を利用するには、まずアマゾンのアカウントが必要です。そしてAmazon Goのアプリをスマホにダウンロードする、という準備が必要です。
ふだん利用している日本のamazon.co.jpではなく、米国のドットコムのアカウントでログインします。ない場合はドットコムのアカウントを作成することになります。
うまくログインできると、自分のkeyが出ます。
入口と出口がセキュリティゲートになっていて、入店するときに、Amazon GoのアプリでこのQRコードをスキャンさせて入店することになります。
実際のお店の様子
さて、実際のお店ですが、日本のコンビニにオフィスビルのセキュリティゲートを組み合わせたような印象です。広さは日本のコンビニの倍くらいでしょうか。
通りからガラス越しに覗いた様子です。「Just Walk Out Shopping」を謳っていますね。
日本ではレジの脇にセルフレジを置いていたりする例が増えてきましたが、レジ自体がない、というのが大きな特徴です。
日本のコンビニに近い品ぞろえ、レイアウトと感じました。
整然と揃えています。朝の開店直後のせいか、とくに欠品のアイテムはありませんでした。
サンドイッチやカットフルーツ(日本よりお得!)も充実していました。
お土産用の限定のチョコやマグカップも販売していました。
レジはないのですが、店員さんはいます。写真でオレンジ色のユニフォームを着ている人がそうです。理論上は完全な無人化にできそうな気もするのですが、サポートのためか、また商品の補充をしていました。
Amazon Goで店員の人の手を介さずに会計できる技術的な詳細はまだ明らかにされていません。米国のメディアによれば、数百ものカメラが設置され、さまざまな認識技術を組み合わせて、商品の購入とお客さんのアカウントとを結びつけているといわれています。また顔認証ではなく、動きを記録し、ディープラーニングをしている、という報道もあります。たしかに天井にセンサーらしきものもありましたが、違和感などは感じずに買い物をすることがきました。
(*https://www.nytimes.com/2018/01/21/technology/inside-amazon-go-a-store-of-the-future.html)
(*https://techcrunch.com/2018/01/21/inside-amazons-surveillance-powered-no-checkout-convenience-store/)
お店の外や出入り口周りにもいます。今回は店内に2名、店外に3名のスタッフがいました。
また肝心のお客さんですが、私が買い物をしていた10分ほどの間に、ヒスパニック系女性1名、白人女性1名、白人女性ペア2名、白人男性1名、白人男性1名、それにわれわれ日本人2名でした。いずれも付近のオフィスに勤務している30代と見受けられる方でした。買っているものはと言えば、7時過ぎの時間なので、皆やはりヨーグルトやドリンクを手にしていました。
当初の勝手な想定としてはもっと大勢の人や観光客がいるかとも思ったのですが、時間帯によるのが大きいのかもしれません。立地は完全なオフィス街で7時台前半の写真ですが、付近の通行量はそれなりに結構あります。やはり日本よりも朝のスタートは早いですね。
出口も同じように自動改札ゲートです。出るときはスキャンなどせず、そのまま出るだけです。商品を抱えたまま、ゲートが空くのでそのまま持ち出す、万引きではないのですが、不思議な感覚になります。
出口の向こうに見えるのがレンジ2台です。温め用においてあるのがまたコンビニっぽいです。ちなみにレンジはPanasonicでした。
店を出てしばらくするとメールで買い物の明細が送信され、またアプリの画面にも買い物結果が表示されます。
今回は朝ごはんを買いました。しめて12ドル。8分1秒滞在した、という表示もあります。
まとめ:
レジがない、イコール省人化、無人化と考えてしまいがちですが、むしろ、レジがないということは、そこがボトルネックになることなく短時間に大量のお客さんを裁くことができる、売上拡大の可能性があると感じました 。スマホにアプリ必須とすれば昼食時のオフィス街はもちろんですが、オリンピックのようなイベント会場はで大活躍するでしょう。ただしその場合でも商品の補充をどうするか、欠品をどのように防いでいくかがやはり課題になると思われます。もちろん、詳細が明らかにされていない技術面の課題もあると思います。
また商品をもって店を出るだけ、というのは、「Just Walk Out Shopping」を謳うだけあって、非常に奇妙で新鮮な感覚でした。まずはこれを切り口にアーリーアダプターのお客さんを呼び込み 、その後大量調達で人気アイテムを低価格で一気に展開していく戦略もあるかもしれません。
歴史を振り返ると、Amazonが最初にサービスを始めたころ(1994年設立、97年IPO)は、米国では多くの本を1か所で買える、世界最大の書店というのが一番の価値でした。また当時日本では明らかな洋書の内外価格差があり、日本の店頭で売っている書籍のドル換算レートが高く、Amazonを通じてより安価に購入することができました。それが 日本のお客さんにとって一番の価値でした。その後、Amazonが日本で一番紙おむつを売るお店になったり、ペットボトルの水を運ぶのが重いから嫌だというだけでAmazonで買い物をするようになるとは、誰もわかりませんでした。Amazon Goのお店もコンセプトとしては今は「Just Walk Out Shopping」ですが、お客さんのほうがさまざまな利用法をみつけて新たな価値を発見したり、それをもとに新しいサービス、さらにはビジネスモデルを変えるような将来も想像されます。
私はふだんの生活で日本のコンビニに、たいへん満足していて、ありがたい存在として利用しています。中国など海外で実験を始めている例もありますが、ぜひ日本でもコンビニ・ゴーに挑戦してほしいと感想を持ちました。