この写真に写っている建物は何でしょうか?リゾートホテルのようにも見えますが、イタリアのミラノにできたスターバックスです。それぞれの持つバイアスによって、事実とは違うものに見えてしまうことがあります。企業の経営者の方の中には、業績が上がらない理由として「うちの従業員はやる気がないから」と個人の性格のせいにしてしまっている方も多いのではないでしょうか。期待するような行動をしない、結果がでない理由は、実はやる気がないのではなく、他にあるかもしれません。今回は、思い込みを排除して、生産性を向上させるためのコミュニケーション方法をご紹介したいと思います。
(1):生産性向上とは
企業が持続的に成長していくためには、生産性向上が必要です。生産性とは式で表すと、産出(output)/投入(input)。あるモノをつくる(産出する)にあたり、生産諸要素(投入)がどれだけ効果的に使われたかを割合で示したものです。例えば、最新技術の機器を導入したものの、従業員が使いこなせず余計に時間がかかってしまうと、生産性が低いということになります。さて、どのようにすれば生産性が高まるのでしょうか?生産性を求める公式の分母、分子の構成要素に注目して、改善していくことが必要ですが、今回はinputの中でも重要な資源であるヒトとのコミュニケーション方法に、行動分析学の視点から注目します。
(2):行動分析学のABC分析とバイアスの排除
行動分析学とは「人がなぜそのように行動するのか」について法則を見つけて探究しようとする心理学の一分野で、ビジネスの分野でも応用されています。行動分析学の基本は、ABC分析です。ABC分析と聞くと、商品を売上高などの重要度によって分類する分析方法を思いだす方も多いと思いますが、行動分析学の場合は、A先行状況(Antecedent) B行動(Behavior) C結果(Consequence)の3つの段階に分けて見ていくことを言います。行動を分析するには、バイアスを排除し、行動を客観的に捉えることが重要になります。では、そのポイントを見ていきましょう。
(3):良いコミュニケーション方法の5つのポイント
良いコミュニケーション方法のポイントは以下の5つです。
- 勝手な解釈をしないこと(思い込みを捨てる)
- 観察可能であること(ビデオで撮影したら画像に映る)
- 信頼性があること(少なくとも二人以上が同じ意見である)
- 測定可能であること(定量的である)
- 具体的であること(5W1H:いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」を用いる)
これらのポイントに気をつけると、良いコミュニケーションができるようになります。 「もっと良い資料を作成するように」、という指示を与えたいと思う場合、自分の意図する「良い資料」とはどういうもの指すのか、具体的に伝えます。例えば「良い資料とは、重要ポイントを絞り、図表を加えた、読みやすいものを意図するので、上部に重要と思うポイントを3つ表示させ、フォントの大きさを10に揃え、業績に関する図表2つを下部に配置し、図表それぞれにタイトルをつけること」といった具合です。また他の例として、ビデオで撮影して映らない「感情」などは、勝手な解釈なので排除します。例えば、下の写真の説明を求められた場合、「ヤギが5匹いる」、ということは言えても、「黒ヤギは空腹で急いでいるので茶色いヤギにぶつかっている。白いヤギはそれを悲しみながら見ている。」というように、空腹、急いでいる、悲しんでいる、は勝手な解釈であり、ビデオには映らないので、正しく行動を表したものではないと言えます。
まとめ:
今回は、思い込みを排除して、生産性を向上させるための行動分析学に基づいたコミュニケーション方法をご紹介しました。勝手な解釈をせず、見たままに捉え、情報の信頼性を大切にし、測定可能なように、5W1Hを用い具体的に伝えるコミュニケーション方法が重要です。そうすることで相手から期待通りの行動が得られるようになり、生産性向上に繋げることが可能となります。ぜひ取り入れてみてください。
出典:
Leslie Wilk Braksik (2007). Unlock Behavior, Unleash Profits 2nd Edition. McGraw-Hill Education
島宗 理 (2015) 「リーダーのための行動分析学入門」日本実業出版社
参考URL:
日本生産性本部 生産性とは https://www.jpc-net.jp/movement/productivity.html
CLG consulting, NORMs of objectivity https://clg.com/proven-methodologies/proprietary-tools/norms-of-objectivity/
筆者:井原美恵