少子高齢化により世界でも類を見ない超高齢化社会に突入している日本。人口減少によりいやがおうでも国内市場は今後さらに縮小していきます。このような外部環境において、企業が持続的成長を遂げるために海外展開の必要性が高まっています。今回は、数ある国の中で、シンガポールに海外展開する魅力についてお伝えします。
(1):外資系企業のアジアヘッドクオーター、アジア系人種のるつぼ
シンガポールの面積は約699平方キロメートルで東京23区(約621平方キロメートル)とほぼ同じ大きさの小さな国です。2016年の人口は、約550万人、人口密度は7,000人を超えて、国別では世界第2位です。ちなみに、東京23区の人口は920万人で、人口密度は約1万5千人ですから、東京23区ほどは密集していないことがわかります。約3万人の日本人がシンガポールで暮らしています。
イギリスの調査機関(EIU:Economist Intelligence Unit)によると、2016年の世界生活費ランキングで、シンガポールが第1位になりました。シンガポールで売られている商品やサービスは何でも高く感じますが、特に不動産、自動車が高く、タクシーや電車は日本と比較すると安いです。レストランに行けば、サービス料が別にかかりますし、日本では1,000円ほどのランチが、シンガポールでは3,000円をこえることもあります。一方、500円以下で食べられるホーカーと呼ばれるローカルの屋台もたくさんあります。
シンガポールの人口の約7割がシンガポール人(シンガポール国籍)で、3割が外国人です。以前は、アジアヘッドクオーターを日本に設けていた外資系企業が、法人税や経済特区の優遇によりシンガポールに拠点を移したこともあり外国人の割合が高いこともシンガポールの特徴です。
シンガポール人の97%は、中国系・マレー系・インド系の人たちが占めています。中国系シンガポール人はシンガポール人の約74%を占めています。マレー系シンガポール人はシンガポール人の約13%を占めています。残り約9%がインド系シンガポール人です。シンガポールの人口の約3割を占める外国人は、欧米人、フィリピン人、マレーシア人、ミャンマー人、バングラデッシュ人、日本人などです。シンガポールは国際色が豊かであることがわかります。
(2):シンガポールで商品やサービスを展開する波及効果
先に述べた通り、シンガポールには東南アジや東アジアの人種がそれぞれのエリアで独自の生活をしています。中国系シンガポール人が多く共住するエリア、インド系シンガポール人が多く共住するエリアがあり、消費財を販売するにはターゲティングが行いやすいです。また、富裕層も国が小さいことも手伝って同じエリアに住んでいるため、こちらも効率的なマーケティングが行いやすいです。
また、中国系シンガポール人に受け入られた商品・サービスは中国に、インド系シンガポールに人に受け入れられた商品・サービスはインドに口コミで広まりやすいこともシンガポールの特徴です。シンガポールで成功した商品やサービスはその何百倍もの市場に波及することが期待できます。中国やインドに展開する前に、シンガポールの中国系シンガポール人やインド系シンガポール人をターゲットにして、商品やサービスのローカライズを行う企業もあります。つまり、テストマーケティングとしてシンガポールに進出する外国企業も多数存在します。
(3):流通や法規制などビジネスインフラが整備されている
シンガポールは、国が狭いこともあり流通網が安定しており宅配便も日本と同様に発達しています。日本からEMSを使って速達便で配送すると翌日にはシンガポールに届けることができます。実際、筆者が佐賀県から医薬品をシンガポールの友人宅にEMS(速達便)で発送したら翌日にはシンガポールに住む友人に届けることができました。
また、シンガポールは輸出入に関する規制が明確に規定されており、ホームページで簡単に問い合わせることができます。例えば、医薬品や医療機器の輸出入についての規制を調べたければ、HSA(シンガポール保健科学庁)のホームページを見れば、多くの疑問点は解決できます。さらに詳しい内容を聞きたければ、同ページ内にある問い合わせフォームから英語で質問すれば、直ぐに返信がもらえます。こちらも、実際に筆者がHSAに質問したら当日に担当官から返信がもらえました。
シンガポールは東南アジアに位置しながら、日本と同等かそれ以上に流通が安定しており、規制も明確です。また、外国人企業の誘致に積極的なこともあり、外国企業からの問い合わせについても丁寧かつ迅速に対応してもらえます。
(4):シンガポールの現地調査はクラウドソーシングサービスを活用
実際に、シンガポール市場での潜在ニーズや消費者動向について調べようと思った場合、クラウドソーシングサービスの利用がお勧めです。シンガポールで現地調査を行う前の事前調査として活用してください。
海外のクラウドソーシングサービスに特化したワークシフトには、世界各国に住む現地の人たちにインタビューや市場調査が依頼できるサービスがあります。クラウドソーシングで仕事を依頼する場合は、依頼主である企業が予算と依頼内容を提示して、仕事を引き受けてくれるワーカーを募集します。応募者は、依頼主の依頼内容に基づいて提案や予算、納期などを提示します。応募者が複数いる場合は、依頼主が最も提案がよかったワーカーを選定するのが一般的な流れです。日本企業が展開するワークシフトには、日本語ができる現地のクラウドワーカー(仕事の受託者)もいますが、日本語が堪能でない現地の人たちもいますので、その場合には英語でコミュニケーションすることになります。
クラウドソーシングはもともと海外発祥のサービスであるため、海外のクラウドソーシングサービスもたくさんあります。代表的なサービスは、GLGというクラウドソーシングサービスです。GLGは、クライアント企業と世界60万名の有識者をマッチングしてくれるサービスです。あなたが現地の言葉や英語に堪能であるなら、海外のクラウドソーシングを利用することもお勧めです。GLGに登録しているワーカーは、有識者や専門家ですので品質は確かです。デメリットは、日本企業の商慣習については知らないため、要求内容を具体化する必要があり、コミュケーションコストがかかります。
このようにクラウドソーシングサービスを利用することで、現地の消費者にインタビューをしたり、デスクトップ調査を依頼して報告書を作成してもらうことがインターネットを使って手軽にできます。
まとめ:
一見するとシンガポールは人口が少ない小国のように思いますが、シンガポールはアジアで成功するための試金石であることがわかっていただけたと思います。東南アジアでありながら、インフラや法整備が進んでおり、海外展開が初めての企業でも比較的進出しやすい国であるといえます。また、シンガポールには日本人も多く居住していますので、クラウドソーシングサービスを通じて安価で現地調査を依頼することができます。自社の商品やサービスがシンガポールで潜在ニーズがありそうでしたら、シンガポールへの進出を本格的に検討してみてください。
執筆者
長島