グローバル・マネジメント・スキルセット100 【直接話法】 2018/06/18
外国人にこちらの意図が伝わらなくて困って経験がありませんか?英語ができるようになり、英語でしゃべっても、やはりうまく伝わらない。相手が日本語がわかる外国人なので、安心して日本語で話す。そのときはちゃんと伝わったと思ったが、後日、まったく違うことが起きていて、理解されてないことがわかる。海外や外国人との仕事には、日本で日本人相手に実践しているマネジメントの方法は通用しません。プロの海外コンサルタントが海外や外国人チームで実践している「グローバルマネジメントスキル」をご紹介します。
まずは、コミュニケーションの方法としての「直接話法」をお教えします。
【直接話法とは】
直接話法とは、思ったこと・感じたこと・期待や希望といったことを、1)ありのままに、2)直接本人に、3)すみやかに、4)簡潔に、伝える話し方のことです。日本人の一般的な話法はこの逆で、間接話法です。海外では間接話法は伝わりません。
日本人は間接的に文脈でメッセージを伝える文化と言われます。たとえば、「お見合い」を想定してください。結婚を前提とした交際相手を第三者を通じて紹介されます。さて、会ってみたのち、断るときに、どのように断るでしょうか? 通常は、紹介者通じて「間接的」に、“ライフスタイルが違う”等の総合的な理由(文脈)で断ります。“年収が希望水準以下なので論外”とはいいません。
日本人にとっては、こうした間接的表現が、コミュニティーの中での軋轢を回避する方法で、むしろ美徳とされます。われわれは自然とこの間接表現の優れたスキルを有するようになります。同時に、直接表現のスキルがほぼゼロで、関係配慮と感情配慮のための表現ばかりで、背景が異なる人には伝わらないことが多くなります。海外初心者は、現地での「通じない」現象にショックを受けます。しかし、それは英語力の問題よりも、直接表現力の低さが問題なのです。
【直接話法の例】
日本人の間ではあたりまえの伝え方である間接話法での表現を、直接話法にしたものが下の表です。
いかがでしょう?直接話法で話すと、「ちょっと乱暴な表現になるな・・」と感じたと思います。その感じ方が日本人の特性そのものなのです。乱暴なことは=悪いこと=してはいけないこと、となります。ですので、直接話法での話ぶりを頭では想定できても、実際の場面ではそのように話したり、メールしたりすることをためらって、間接話法にしてしまうのが多くの日本人です。そして、この傾向は、英語を使うときでも全く同じことが起きます。英語を使って間接的にこちらの意図をほのめかす表現をしようとします。ただでさえ不得意な英語で、ほのめかしをするような巧みな表現がでてくるわけがありません。結果、考え込んでしまって言葉がでない。仮に出たとしても、冗漫で、多弁で、主旨がはっきりしない表現になります。相手の外国人は「何を言っているかわからない」となりますし、それが繰り返し起こると「あの人は英語は話すが、ちゃんとしたコミュニケーションができない人だ。」と評価されてしまい、相手にされない状況になります。
【間接話法で書かれたメール】
下のメール文は日本人の書いた英文を邦訳したもので。このメールが求めている相手のアクションは赤線で囲った部分です。要求事項は、文頭の目立つところでなく、文末に隠れるように書かれています。これは、中核メッセージが最後に結語的に書かれている典型的間接話法のメールです。これでは、最後まで丁寧にメールを読まない限り、メッセージは理解されませんし、相手のアクションは発生しません。
もともとの英文メールはこのようになっています。
【直接話法への変換】
この文書を直接話法に変えてみましょう。コツは二つです。まずは、結論前置法です。これは中核メッセージを冒頭に持ってくるだけです。もう一つは総量半減法です。とかく冗漫な日本人の言葉は50%削減で丁度いい程度になります。前のメール文は16行で、結論が後半にありました。結論を前半にして、16行を半分の8行にしたものがこの文面です。赤字のところが主文です。
英語は以下になります。
相手に要求する期待事項をまず文書の頭に部分にもってくる。(結論前置法)そして、社交辞令的な冗漫な文書を極力短くする。(総量半減法)を行うと、短くてより明確なメッセージ連絡になります。
こうした端的でかつメッセージ内容が明確に書かれたメールを読むと、「お、この日本人は他の日本人と違ってコミュニケーションがしやすいな!」と評価してもらえます。これは英語であっても同じで、英語をどんなに上手に駆使したところで、表現方法が間接話法で、「何が言いたいのかわからない?」ようなコミュニケーションを続ければ、相手の反応は確実に鈍くなってきます。
我々日本人は、普段の日本の生活ではこの直接話法はまず経験しないので、スキルとして意識して身に着ける必要があります。海外とのやりとりは直接話法、結論前置法、総量半減法で臨んでみてください。
執筆者
黒田和光
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